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漢方病理学Q&Akanpoubyouriqa

キャラクター紹介


なんでもしりたい、しりたいゾウ。Question担当です。初心者の皆さんに変わってなんでも質問してくれます。





なんでも答えてくれる物知りな脉の神様、みゃく神。しりたいゾウの面倒な質問にも丁寧に答えてくれます。



1.病気や症状の原因は?

Q:なぜ人は病気になったり、いろんな痛みなどに悩まされたりするのか知りたいゾウ?

A:すべてはバランスの乱れが原因じゃ。


 
 何のバランスか?というと、一言でいえば各内臓(五臓六腑)のエネルギーバランスです。東洋医学では生命エネルギーのことを「気」というのですが、そのバランスの乱れから病気は始まります。
 例えば100%健康体の人がいたとして、その人がまずどこからバランスを崩していくのかというと、まず五臓精気が減少してきます。気が減少し弱った状態を「虚」と呼ぶのですが、五臓は陰陽論における陰の部に属しており、その陰性の精気が減少するので、これを「陰虚証」と呼びます。すべての病気や症状はこれが出発点になるのです。

Q:五臓精気は、なぜ減少するのでしょう?

A:持って生まれた元々の体質(素因)や、内因と呼ばれる精神意識のバランスの乱れが主な原因じゃ。



 五臓のうち肝・脾・腎は陰臓と呼ばれ、陰の部に属する五臓の中でも、より陰性が強く、身体の中で一番のベースになるものとされています。人は、その肝・脾・腎のいずれかがそれぞれ弱りやすい、3つの体質(肝虚証タイプ・脾虚証タイプ・腎虚証タイプ)に分けられると、我々は考えております。これが、素因といわれる元々の体質です。
 内因とは、七情ともいわれ、怒→肝、喜→心、思→脾、憂・悲→肺、恐・驚→腎と、七つの感情がそれぞれ五臓の精気を減少させるといわれています。
 また、他の原因としては、運動の過不足や睡眠の過不足、飲食の乱れなどが挙げられますが、それらは素因を助長することが多いようです。

Q:「陰虚証」が病気や症状の出発点になるのは解りましたが、そこからどのようにエネルギーバランスが崩れていくのでしょうか?

A:まずは「陰虚内熱」といわれる、身体に熱がこもった状態を引き起こすのじゃ。



 五臓の精気は、生命活動の土台となるものです。一方で、六腑陽気と呼ばれる活動的な気と深い関連があります。陽気は身体を温めて体温を保つ作用(温煦作用)がある反面、多くなり過ぎて停滞すると熱を持ちます。精気の引き締める力があってこそ、陽気は健康的に働きますが、精気が虚し引き締める力を失うと、陽気は暴走し、旺盛になり停滞します。停滞した陽気は虚熱(陰虚により相対的に増えた熱)となり、凝りや痛みを引き起こしたり、痒みや不眠、ほてり、微熱、便秘など多岐にわたる症状を生み出すのです。「陰虚内熱」の状態は、いわばラジエーターの働きが悪くなってオーバーヒートを起こしているような状態です。陽気が盛んな分、全体的な体力はしっかりしているのが特徴です。

Q:では、体力のない方、いわゆる虚弱体質の方はどういう病理状態なのですか?

A:「陽虚外寒」という病理状態じゃ。



 五臓の精気は、陽気を引き締めコントロールする働きがあるのと同時に、陽気を生み出す元締めでもあります。五臓の精気の虚が著しくなってくると、陽気を生み出す力も衰えてきて、陽気自体が虚してきます。陽気の温煦作用も少なくなるため、身体が冷え、活動力も低下し、体力も衰えてきます。陽気は精神意識活動とも密接に関連しているので、精神的にも内向的になり、鬱傾向も出てきます。「陰虚内熱」と「陽虚外寒」は正反対の表現ですが、実際にはその中間の状態の方も非常に多く、「やや陽虚傾向」などの表現もよく用います。

Q:精気が陽気を生み出す元締めとはどういうことでしょう?

A:それを説明するには、五臓の働きや三焦というものから説明していく必要があるじゃろう。



 五臓のうちで、親から受け継がれる「先天の精」といわれる、生命活動の大元締めである精気を蓄えているのが腎臓です。その腎精は肺・心(陽臓といわれ、臓の中でも陽気が多い)から陽気を引っ張ってきて腎の陽気(「命門の火」といわれ、生命活動の重要なエネルギー源となる)を作ります。腎の陽気があるのが、下焦といわれる臍下の場所です。
 その命門の火が中焦(臍上)にある胃を、鍋を煮るように温めます。その結果、胃の中の飲食物から陽気が作り出され、それは脾の精気の作用によって横隔膜の上(上焦)にある肺へと運ばれます。
 肺は、その陽気と呼吸活動によって吸い込んだ清気を合わせて「宗気」といわれる胸の陽気を作り出し、その一部と心の陽気の一部が共に下焦に降りていき、また腎の陽気となるのです。
 この陽気生成システムを「三焦」と呼び、この三焦自体が六腑の一つになっています。この陽気生成システムを動かしているのが、腎の「先天の精」であり、不足した「先天の精」の供給源が、脾で飲食物から作られる「後天の精」や、肝臓に蓄えられている「血」なのです。この、主に腎・脾・肝の精気がしっかり働いてこそ、飲食物から陽気をスムーズに生み出していくことができます。(参考資料②
 陰気が虚すことによって、このシステムが働きにくくなり、陽気の生成がスムーズにいかなくなったのが「陽虚外寒」の状態になります。

Q:他にはどんな病理状態があるのか知りたいゾウ?

A:他には陰実証と陽実証というものがあるのじゃが、これら四つの病理状態が四大病証といわれる漢方病理学の一番基本となるものなのじゃ。



陰実証・・・陰の部に熱が停滞して実を呈した病理状態。陰の部とは陰臓である肝・脾・腎のことですが、脾・腎には精気と津液しかないので、熱が停滞することはありません(脾の熱は胃に行き、腎の熱は命門や膀胱に行く)。なので、陰実証とは肝臓に熱が停滞した状態ということになります。肝は血を蔵する臓器で、血は津液と陽気(血中の陽気を営気と呼ぶ)で構成されているので、肝気や肝血が停滞すると熱を持ちます。
このように陰実証の初期は熱を持ち(血熱)、その熱がいろんなところに波及するという形で病症を現しますが、それが慢性化していくと、熱の勢いが落ち着いて停滞し、冷えが生じている場合も多くみられます(血寒)。

陽実証・・・陽の部に熱が停滞して実を呈した病理状態。ここでいう陽の部とは、陽経(陽の経絡)のことで、特に太陽経と陽明経に停滞し、実を呈しやすいです。その原因は外邪によるもので、外からの要因により体表に陽気が停滞した状態といえます。感冒による発熱が代表的なものですが、狭義の意味では捻挫などで患部に熱を持った状態も陽実証といえます。同じ発熱でも、邪が内攻(陽経だけではとどまらず、陽の部から陰の部へ攻め込んでいくこと)し、腑の熱実や陰実証の状態になる場合もあります。

これらの四大病証は、身体の中で同時に起こりえるもので、すべて陰虚証がベースになっています。例えば、陰虚ベースで、陰実も絡んでいて、少し陽虚傾向で、若干陽実になっている・・・なんて場合もあります。あと、陰盛証といわれるものもありますが、これは陰実証とは違い、陰のもの(津液)が盛んになっている状態のことをいいます。本会では水毒といわれる、余分な水の停滞が起こっている状態のことを、陰盛証と呼んでいます。

漢方鍼灸臨床研究会

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